SSW ビザ

介護の担い手不足、特定技能人材に高い期待と課題と

あらゆる産業で人材の不足が指摘されている中で、介護業界は、特に人手不足が深刻だと言われています。

2021年7月に厚生労働省が公表した推計では、2025年度には約32万人の介護人材が不足するとされています。急激な高齢化が進む今、高齢者や障がい者のケアを担う人材が大幅に足りないという推計は、衝撃をもって受け止められました。

こうした中で、特定技能の在留資格で海外からの人材が介護業界でも、少しずつ増えています。ただ、介護サービスの提供には、利用者との高度なコミュニケーションが不可欠となります。他の産業と比べて高い日本語力や、さまざまな技能が求められる仕事でもあり、受入れ先の介護事業所では、さまざまな課題が浮上しています。

わたしたち浅草国際法務は、在留に関わるさまざまな申請業務にとどまらず、事業者様が抱えるさまざまな課題に対し、ともに考え、解決のお手伝いに取り組んでいます。

「世界一の超高齢社会」の深刻な人手不足

総務省は2023年9月、日本国内における75歳以上の人口が2,000万人を超え、10人に1人が65歳以上の80歳以上となったことを「統計からみた我が国の高齢者」で発表しました。この統計では、2045年には総人口の約36.3%が高齢者になることも予測されています。
人口に占める高齢者の割合が世界最高となった日本では、継続的に介護職員を増やしていくことが欠かせず、介護人材の確保は喫緊の課題です。

厚生労働省の「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によれば、2025年度には、2019年度と比べて、32万人の介護職員を増やす必要があると推計しています。
【必要介護増員数(2019年度比)】

  • 2023年度…+約22万人
  • 2025年度…+約32万人
  • 2040年度…+約69万人

介護分野の人材不足を解消し、高齢者が尊厳を保ちながら生活できる社会を実現するために、国では次の取り組みを行っています。

【主な介護人材確保対策】

  1. 介護職員の処遇改善
  2. 多様な人事の確保・育成
  3. 離職防止・定着促進・生産性向上
  4. 介護職の魅力向上
  5. 外国人材の受け入れ環境整備

国内外の人材を広く介護業界に受け入れ、より良い環境下で人材を育成して定着させることで、介護職の魅力や生産性の底上げを図る取り組みです。とは言え、少子化が進む日本において、国内だけで人材を確保することは非現実的です。そのため、外国人材の受け入れ環境の整備が急がれています。

2019年にスタートした在留資格「特定技能」は、このような状況を打破するために生まれた制度です。生産性向上や国内人材の確保のための取り組みを行っても、なお人材を確保することが困難な状況にある産業分野に、一定の専門性や技能を有する外国人材を受け入れることができます。

特定技能1号の「介護」分野では、外国人材が介護職や看護助手として、身体介護関連業務などに就くことができます。ただ、いまのところ、訪問介護の仕事については特定技能から除外されています。
介護分野の特定技能1号の在留外国人数はここ数年で緩やかに増加し、2023年6月の時点で約2万2,000人になりました。2022年6月以降、半年に5,000人ほどのペースで増えています。

出典:出入国在留管理局「特定技能制度運用状況」を基に浅草国際法務作成。

増加傾向にはあるものの、依然として国内で必要とされる介護職員数とはかけ離れており、さらなる外国人材の受け入れが求められています。

特定技能1号「介護」の要件・試験内容

外国人が特定技能1号「介護」を取得するための要件は、17歳以上(インドネシア国籍は18歳以上)であること、次の①から④のいずれかを満たすことです。

【特定技能1号「介護」の要件】

  1. 介護技能評価試験、介護日本語評価試験、日本語能力試験に合格する
  2. 介護分野の技能実習2号を修了し、介護日本語評価試験に合格する
  3. 介護福祉士養成施設を修了する
  4. EPA介護福祉士候補者として4年の在留期間を満了する

上記4つの要件は、「試験あり:1、2」と「試験なし:3、4」に大別されます。2、3、4のいずれにも該当しない1の場合、次の3つの試験に合格する必要があります。

【特定技能「介護」の試験内容】

  1. 介護技能評価試験 *サンプル問題
  2. 介護日本語評価試験 *サンプル問題
  3. 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4

上記試験の合格基準は、介護技能評価試験が総得点60%以上、介護日本語評価試験は総得点65%以上とされています。国際交流基金日本語基礎テストや日本語能力試験N4などの合格基準は、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない」「基本的な日本語を理解できる」レベルです。

特定技能の介護分野は他分野と異なり、これら3つの試験に合格する必要があるため、在留資格取得の障壁になることもあります。
そのほか2の要件の場合も、介護日本語評価試験に合格する必要があります。
3、4のいずれかの要件を満たす場合は、介護技術・日本語能力ともに十分に備わっているとみなされるため、試験は免除されます。

特定技能1号「介護」が抱える課題

前述した障壁のほかにも、特定技能1号「介護」に関して、外国人材・受け入れ事業者の双方は、次のような課題を抱えています。

【外国人が抱える課題の例】

  • 日本/介護特有の文化や習慣に対する理解
  • 現場で求められる日本語能力が備わっていない
  • 悩みを相談できる場所がない

【事業者側の課題の例】

  • 外国人材受け入れや管理に必要な煩雑な書類や報告、記録など
  • 外国人材の住居確保などの生活支援業務
  • 外国人材の転職や契約不履行
  • 日本人職員と外国人材との意思疎通
  • 外国人材の査証更新作業
  • 外国人材一時帰国による長期休暇

文化や言語に関する問題以外の課題としては、「登録支援機関の認定に時間がかかりすぎる」「書類が多く申請が大変」といった、外国人材の受け入れ申請や管理に関する書類作成、記録などに関する悩みが挙げられています。
申請時の必要書類に関しては、雇用を予定する外国人本人に関する書類、受け入れ事業所に関する書類、介護分野で特に必要となる書類が必要なうえ、雇用条件書や支援計画書など全部で30種類以上の書類を用意することとなります。
(参考:公益社団法人 全国老人福祉施設協議会「外国人介護人材に関するアンケート調査」)

浅草国際法務にできること

わたしたち行政書士事務所浅草国際法務では、外国人のみなさまの在留に関する申請や手続きにとどまらず、介護人材として来日する方々の長期の就労を実現するため、さまざまな支援を提供しています。

そのために、介護事業者さまが抱える課題や、就労中に生じるさまざまな課題に対し、丁寧に対応し、必要な解決策を事業者さまとともに作り上げて参ります。

ぜひ、当事務所にお気軽にご相談ください。

-SSW, ビザ
-

Copyright© 行政書士事務所 浅草国際法務 , 2024 All Rights Reserved.